お借りします

AONA:2045書いた人です
また書いたので、ここにお借りして載せときますね
大丈夫だとは思いますけど、イヴの過去の設定を完全にネタバレしてるので一応注意です



 タイトル
『Lilith:2100 ~できそこないは殺人学校の中で神様に愛された少女に願う~』





「はぁ……」

 お昼前の、学校の校舎の中。
 私は窓の外を眺めながら、一人ため息を吐く。

「テスト、嫌だなぁ……」

 そしてそんな事を、誰にでもなくただぼやく。

 この休み時間が終わったら、定期テストが始まってしまう。
 そうしたら私は、また赤点をとってしまうだろう。
 自慢じゃないが、私は物凄く成績が悪いのだ。それはもう、学年最下位が定位置になっているくらいに。
 だから次のテストも、どうせ赤点になってしまうだろう……。

「はぁぁ……」

 一人で憂鬱になりなりながら、ただぼーっと窓の外を眺めて過ごす。
 そうしていると、ジリリリリという音がなかった。始業を告げるベルの音だ。
 その音と共に、先生が教室の中に入ってくる。そして生徒のみんなも席に着く。
 うう……。とうとう始まってしまう……。

「それでは、テストを開始します。……始めて下さい」
 
 先生がそう合図する。
 その言葉と共に、教室内のみんなが一斉に動き出す。
 みんなは机の上に置いてあるもの――拳銃を手に取る。そしてそれを、異様な速度で分解していく。
 私も負けじと、必死にマガジンを抜き、テイクダウンレバーを下ろし、スライドを取り外し、リコイルスプリングやバレルを取り外していく。
 そして、もうこれ以上は分解出来ないというというところまでバラし終えた後。オイルを注し、専用の器具を使って銃身内の不純物を取り除き、再度組み上げていく。

「出来ました」

 教室の中にそんな声が響いた。
 勿論私の声ではない。私はまだ、半分くらいの工程が残っている。

「流石ですねイヴさん。前よりも更に早くなっています」

 先生が、誇らしそうな声をあげる。

「これで私は、また信仰を深められたでしょうか?」
「ええイヴさん。きっと神様は、あなたの事を見てくれていますよ」

 何が神様だばーか。
 頭の中でツッコミを入れれながらも、私は必死に銃の構造との格闘を続ける。
 
「出来ました」
「出来ました」
「出来ました」

 イヴの声から少し遅れた後。機械的な声が、次々と教室の中に鳴り響いてく……。
 そしてしばらく経った後。その教室の中で必死に手を動かしているのは、やっぱり、私一人だけになってしまった。

「リリスさん……また、あなたが最後ですか……」

 失望の篭った先生の声。そして周りの子達の、哀れみや軽蔑の篭った目線。
 できそこない。そんな事を思われているのだろう。

「リリスさん。私達は善行を重ね、神様の元で幸せに生きる為に過ごしているのです。そんな事では、幸せになる事が出来ませんよ」

 先生が、そんな言葉をかけてくる。
 うるせえばーか! こんな殺人者養成学校で人を殺す訓練なんかしてる事が、善行な訳ねえだろうが!!
 そう声を大にして叫べたら、一体どれだけ楽だろうか……。
 私は泣きそうになりながらも、一人テストが終わるまで、ひたすら手を動かし続けるのだった。


      • -


 その後も、テストは続いた。
 人の模型を銃で打ち抜いたり、手榴弾を正確に遠投したり、ピラニアの一杯いる池を泳いだりした
 そしてその殆どで、私は最下位の成績だった。

「うう……、痛い……」

 過酷なテストによる打撲や切り傷で、体中がズキズキと痛む。
 そんな体を何とか引き下げて、私は教室の中へと戻ってきた。

「お疲れ様様です、リリスさん」 

 黒い髪と白い肌をした少女が、教室の中に入る私を出迎えてくれる。
 その少女の体には、私とは違い、傷は一つも付いていない。

「イヴ、傷一つないね……」
「はい。リリスさんはその、大変でしたね……」
 
 この子は私とは真逆で、この学校屈指の天才だ。だからテストをしても、傷を負うようなヘマはしない。

「もー、ほんとに大変だったよー、イヴー」

 私はイヴに、半泣きになりながら抱きつく。イヴはそんな私の頭を、優しく撫でてくれる。
 ここは最低の場所だけれど、この時だけは癒される……。
 学校最低のできそこないと、学校の最高傑作。能力は正反対だけれど、イブは私の唯一にして一番の友達だ。

「もう給食の時間、始まってますよ」
「ええ、もうそんな時間なの」
「はい。今日はみなさん頑張ったから、カレーライスならしいです」
「わーい、カレーだー」

 私は、昼食がカレーという情報に対して、手放しで喜ぶ。
 教室を見渡してみれば、みんなも嬉しそうにしていた。
 こんな事で喜ぶなんて子供っぽいかもしれない。けれどそれは、自然な事だ。
 だって私達は、全員、まだ9歳の子供なのだから。

「いただきます」

 席に座って、スプーンを取って食事をする。

「今日もこうして美味しいご飯が食べられる事を、神様に感謝しなければいけませんね」
 
 イヴは当たり前のように、そんな事を呟く。

「あはは、そうだね……」

 これさえなかったら、完璧な友達なんだけどな……。
 そんな事を思いながら、私は目の前の少女が、子供らしくカレーを頬張っているのを眺める。
 この教室の今の景色だけを見たら、たぶん誰もがそう思うだろう。

 この学校が殺人学校だなんて、信じられないと。

「はぁ……」

 ほんとにどうして、こんな事になってるんだろうか、私……。
 私はそんな光景を見ながら、ぼーっと自分の境遇に思いを馳せるのだった。


      • -


 私は、生まれた時から謎の施設で育てられた。狭くて白くて、例えるならペットショップみたいな感じの施設だ。
 そして私には、生まれた時から親がいなかった。
 その代わり。沢山の同い年の子供達と、司教だとか先生だとかの変な大人達だけが、沢山周りにいた。

 そして、そんな施設での日々の中。司教や先生達は、ただ私達に言い聞かせ続けた。
 善行を重ね、信仰を深めれば、いつか神のもとで幸せに暮らすことが出来ます。だからみなさん神様の為に生きましょう。そんな事を。

 周りの子達は、疑う事なくそれを受け入れていたた。
 けれどただ一人、私だけは、そんな言葉を素直に受け入れる事が出来なかった。
 どうして私には親がいないの? 大人の人達は何を考えているの? 幼いながらに、心の中ではずっとそんな事を思っていた。

 そして5歳になった時。私達は、今通っているこの学校に入れられた。
 そして来る日も来る日も、人を殺すやり方を教えられるようになった。
 そんな日々を続けている内に、私は周りの子達と比べて、明らかに能力が劣っている事も分かるようになっていった。
 過酷で意味の分からない生活。自分一人だけが、能力も考え方も違う恐怖。
 そんなものの中で、私は他の子に合わせて普通を装いながらも、周囲に対しての猜疑心をますます膨らませていった。


 そして、そんなある日。
 私は、大人達に隠れて、司教と呼ばれている人の机の中を漁ってみた事があった。
 するとそこからは、沢山の事が書かれた紙が出てきた。
 
 細胞を弄ると新しい人類が生まれる。その子達は頭も体も優れていて、そして人を疑う心が薄い。
 だからその子達を沢山作る。そしてモナドアカデミーに閉じ込めて生活させる。
 そうしてやがては、その子達を戦わせたり売ったりする……。

 まだ子供である私には、その紙の内容を全部理解するのは無理だった。
 けれど2つの事の謎が解けた。
 1つは、周りの大人達が考えている事。周りの大人達は、私達の事を商品として扱っているのだ。
 そしてもう一つ1つは、私が周りの子達と違う理由。疑い深く、頭も体もあんまり良くない私は、要するに、できそこないの失敗作なのだ。

 こんな場所、出来る事なら今すぐに逃げ出したい。けれど、それは無理な事だ。
 この殺人学校の周辺には、子供達が外部に行かないように、強固な防壁が貼られている。具体的に言えは、高圧電流の流れたフェンスが高くそびえ立っている。
 
 逃げ出す事は出来ない。そして、真実を知っている事がバレても、たぶん殺される。
 だから私は、全てを知らないふりをするしかなかった。
 毎日ペットショップみたいな場所で暮らして、司教様達のありがたい言葉を貰って、拳銃と一緒に”普通”に生きるしかない。
 それが私の、今の境遇なのだった。




 昼食を取り終わった後。
 この殺人学校で、私は今日も、日が落ちるまで軍事訓練をさせられた。
 そしてくたくたになりながら、学校の直ぐ隣にある寮へと帰った。
 
「ただいまー」

 私はそんな事を言いながら、寮の中の自分の部屋へと入る。

「お帰りなさい、リリスさん」

 先に寮に帰っていたイヴが、私を出迎えてくれた。
 この殺人学校の寮は、2人1組で一室になっている。そして私は、イヴと同室だ。
 ありえないほど不運な境遇の中にいる私だが、この事にだけは感謝するべきだろう。これが、私とイヴの仲がいい一番の理由なのだから。
 
「私もう寝ますけど、リリスさんはまだ寝ないんですか?」
「うん。私まだちょっとだけ、したい事あるから」
「そうですか。では、お休みなさい」
「うん、お休み」
 
 イヴが眠りに着いた後。
 私は、机にノートを敷いて、そこにペンを走らせる。
 書くことは、私の知らない物語だ。

「今日はどんな話かな……」

 楽しみに思いながら、私は殆ど何も考えずに、手を動かす……。

 私には、ある不思議な能力がある。
 それは、自分が知らない筈の物語が書けるという力だ。

 この殺人学校には、あるのは銃と大人達の偽りの教えだけで、本の持ち込みすら許されていない。 
 しかし私は、この能力のおかげで、この場所にいながら色んな物語に読むことが出来る。
 この時間は、私にとっての唯一の世界との繋がりだ。
 そしてその物語達は、神様がどうとかなんかじゃない。本物の、私のたった一つの私の救いだった。

 自分で手を動かしながら、同時に自分で、その物語を読んでいく。
 その物語のタイトルは、『AONA:2045』。VRのネットゲームをしている女の子の話だった。

 物語に触れられて、一通り満足した後。
 その温かな気持ちを抱いたまま、私は眠りに付くのだった……。


      • -

 
 私は、謎の部屋の中にいた。周りに本が一杯並んでいる、大きな塔の中みたいな場所だ。
 さっきまで眠っていた筈なのに、どうしてこんな場所にいるのだろうか……?
 そんな事を少し悩み、そしてある事に思い至る。

「あ、夢だこれ」

 眠っていたら変な場所にいる。つまり夢だろう。しかも夢である事が分かる、明晰夢という奴だ。

「おお、何しよっかなぁ……」

 明晰夢というのは、その中でなら何でも出来ると聞いたことがある。
 イヴを夢の中に呼び出して、一緒に外の世界に遊びに行く想像でもしようかな……。
 そんな事を考えていたら、どこからから声が鳴り響いた。

「違う、ここは夢の中じゃないよ」

 そこには、謎の男の人がいた。

「あなた、誰?」
「僕の名前はエーフェス」

 エーフィス……、そんな名前、聞いた覚えもない。全然知らん人だ。

「夢じゃなかった何なの、ここ」

 どう見てもこんなん夢だろと思いながらも、一応そんな事を聞いてみる。

「そうだね、じゃあ一から説明しようか」
 
 そしてその謎の男の人は、私へと語りだす。

「万物というものは心を持っていてね。そして、その心が活動する精神世界という場所があるんだ。
 そんな精神の世界を、僕達はイデアっていう名前で呼んでいるいる。
 ざっくり言うとイデア=二次元、実在の世界=三次元って所かな。実在、つまり物質をハードウェアとすると、イデアつまり心はソフトウェアで、本来は何もないが、ケルビムによって実在の世界を再現して投影されているんだ。
 プラトンのイデア論みたいな感じで、そこではすべてのものが理想的な形をしている。 そしてここは、そんなイデアと現実の世界をつなぐ、エデンっていう場所なんだ。
 本来ならここは、死んだ人だけが来る場所なんだけど、僕は特別だから君をここに呼んでいて……」

 男の人は、そんな話を聞かせてくれる。

「あの、ちょっと……」
「ん? 何かな?」
「私バカだから、何言ってるかちょっと分かんないんですけど……。」

 私、こう見えてもまだ9歳だぞ。申し訳ないが、そんな難しい話されても分からん。

「いや、この話はね、君の知らない物語が書ける能力にも深く関わる事なんだけど……」
「はあ、そうなんですか……」

 私は気のない返事をする。すると男の人は、少しだけ頭をぽりぽり掻いてから、私へと改めて話してくれた。

「えーっと、つまり僕はこの世界の神様なの。
 そしてこの世界には、人の心が集まっている場所があって、その場所の名前がイデア。
 そしてここは、そのイデアと現実の世界の中間にある場所なのさ」
 
 ああ、なるほど……。

「それで、その神様が、私に何の用なんですか?」

 どうせ夢だろと思いながらも、私はその自称神様に付き合ってやる事にする。

「僕には愛している人がいるんだ」
「は……?」
「その人は、とても優しくて、強くて、けれど人間味に溢れている。そんな、とても愛しい人なんだ」

 おいおい、まさかのノロケ話かよ……。

「でもその人は、今とても悲しい境遇にいる。だから僕は、その人に少しでも癒しをあげたいんだ」
「はぁ……」

 よく分からないけど、この人には何か大切な人がいるらしい。

「えっと、それは分かりました。けれど何で、私に話しかけてるんですか……」
「その人に一番癒しを与えられる、存在が君だかさ」
「……? あなた、私の境遇を知ってるんですか……?」

 私は、あの殺人学校から出て行く事すら出来ない。
 だから私は、人に頼みごとをされるとかとは、最も無縁な人間なんだと思うんだけど……。
 そんな事を思っていたら、その自称神様は言葉を続ける。
 
「僕の愛する人は、今君と同じ部屋で眠っている少女、イヴなのさ」
「は……?」

 何言ってんだこいつ。
 イヴは私と同じで、あの殺人学校に閉じ込められているんだぞ。それなのに、こんな変な人と知り合いになる事なんて、絶対にありえないない。
 それに、イヴはまだ私と同い年、9歳だ。まさか、危ない人なのかこの人……。

「いや、まって、勘違いしないでくれ」

 私からじとっとした視線を向けられている事に気づいたらしい。
 目の前の自称神様の人は、少し焦りながら、また変な事を語りだした。

「イヴの本当の名前は、アハートゥと言うんだ。彼女は僕が最初に生み出した人間であり、そして心でもある。
 彼女は心を器には移しているけれど、幾度も生まれ変わりながら、僕と共に実在の世界を作ってきたんだよ。
 だから彼女は、僕と会った事はないけれど、既に僕と知り合いなんだ」
「えっと、はぁ……」

 何か、さっきとは別ベクトルで危ない事言い出したぞ……。
 私は誰よりもイヴの事を知ってるんだ。それなのに、私のイヴの本当の名前がアハーなんたらだとか、そんな事ある訳ないだろう。

「信じてくれ、僕は普段は人間として過ごしている。だから、この世界に長くいる事は出来ないんだ……」

 その自称神様の人は、私へとそんな事を言う。
 けれど、夢の中の登場人物にそんな事を言われても、はぁそうですかとしか思えない。
 というかそもそも、私は何でこんなのに付き合っているんだろうか……。
 そんな事を思い始めた時、その自称神様の人の体が、何か段々薄くなり始めた。

「ああ……もう時間が……」

 その自称神様は、私へと向き直る。そしてただ一言だけ、真剣な様子で、私へと聞いてきた。

「もう難しい事は理解しなくてもいい。ただ一つ聞かせてくれ。君はイヴの事が、好きかっ?」
「うん、そりゃ大好きだけど」

 私はただ、けろっとそう答える。
 そんな事は決まっている。だってイヴは、私の、唯一にして最愛の友達なのだから。

「そうか、それなら……よか……」

 そしてその神様は、消えてしまった。
 すると、私の体も何故か消え始める。

「ああ、まだイヴといちゃいちゃしてないっ」

 そして私は、そのまま明晰夢の中から、覚めてしまうのだった。




 ぼーっと、目が覚める。
 ペットショップみたいな真っ白な施設。そんな光景が、視界の中に入ってくる。
 私のどうしようもない現実。この世界は嫌いだ。
 イヴと一緒に、ショッピングとか行きたかったな……。

 そんな事を思いながら、私は、隣のベットで眠っているイヴを眺めた。
 イヴは、ただ安らかな寝顔で眠っていた。

 そんな寝顔を見ながら、少しだけ思う。
 仮に、さっきの自称神様の人の話が、全て本当だったらどうだろうか。

 イヴは本当は、私みたいなできそこないとは違う、神様に愛された少女なのだ。
 それならきっと、イヴはこの施設から出ていけるのだろう。そして外の世界に触れられて、色んな事を体験したり、さっきの神様といちゃいちゃしたりするのだ。

「イヴ……」
 
 さっきの変な奴に私のイヴを渡すのは癪だが、しかし、そうだったらいいなと思う。

 だって、私は物語が好きだ。
 物語は、何時でも私を救ってくれる。この窮屈で退屈な世界から。
 だから私は、何時でも、素敵な物語があってくれたらいいなと思っている。そして、そんなものを紡いでくれる人は、どんな人でも応援したいなと思っている。


 そんな事をぼーっと考えていたら、頭の中に、新しい物語が浮かぶのが分かった。
 私は、新しい物語に触れている為に、そんなものを書き出してみる。
 その物語は、『Lilith:2100~できそこないは殺人学校の中で神様に愛された少女に願う~』というタイトルの、殺人学校に囚われたある女の子のお話だった。





 あらずじ
リリスは今日も、学校に通っていた。
その学校は、人を殺す為の学校、殺人学校だ。
リリスはそんな世界に囚われながらも、神様に愛されたある少女の事を愛していた。


 キャラ設定
リリス
殺人学校”モナドアカデミー”に囚われた少女。
大人達からは新人類”ゼノイド”の一人だと思われているが、実はただの失敗作。できそこない。
だから能力も高くないし、他人の事も疑いまくる。
実は偶発的コロニストの一人でもある。
現実の世界が好きじゃないから、物語が好き。


 オリジナル設定とか
特になし、解釈はこんなもんでよかっただろうか…
コロニストの感じとかは、ノリで書いたので何かオリジナルになってるかもしれない

  • 最終更新:2016-02-13 20:31:56

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